2月20日に北京五輪が閉幕しました。羽生選手の演技を中心に個人の感想で振り返っていきます。
2月8日ショートプログラム
羽生選手は第4グループの21番滑走で登場しました。
これは、ソチオリンピックの時と同じ滑走順で、なんだか縁起がいいなと思っていました。
ショートプログラムの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は清塚信也さん演奏のピアノバージョンです。
全日本でのロンドカプリチオーソ
ちょっと戻って、12月の全日本選手権、このショートプログラムを現地で見てきました。
初めてみたロンドカプリチオーソは
音と音の間の贅沢な余白の美と
ディズニープリンセスみたいな衣装と
一音もこぼさず掬い上げる音楽的センスと圧倒的技術と完璧なスタイルで
ひとつの作品として、その時点でも完成している‥と思いました。
羽生さん史上、今が一番上手いとご自身で言っていたとおり、間違いなく今が一番上手いと思います。
なにせ美しかった。
これに尽きます。
弓道の真善美は「真なるものも美しく、善なるものも美しい」ことだと言います。
それそのままに、圧倒的技術力を持ってして、正しく、美しかった。
これまで「バラード一番」はバラ1、バラ2、バラ3と何年もかけて熟成させていきました。
何年もかけたバラ1。ところが、このロンカプは、初めて人前で披露された瞬間から大層美しかったのです。
これまでの努力を全部詰め込んで、そういった泥臭いところを一切感じさせず、ただただ純度を高めていった宝石のようなプログラムでした。
冒頭のゆったりと始まるパートでは、視線、指先、間合いを贅沢に使って、丁寧に進めていきます。
どうすれば、綺麗に見せられるか、全てわかった上での動きの連続に
完璧な音ハメのジャンプを連ね
終盤のぎゅるんぎゅるんステップまで冷静と情熱の間です。
ところで、テレビだとイマイチ伝わらないのですが、このステップの間のバタフライでの脚がめちゃめちゃ長かったです。(そこ!?)
全日本だと、日本人離れしたスタイルの良さも圧倒的でした…。
北京五輪でのロンドカプリチオーソ
さて、話は戻って北京五輪のロンドカプリチオーソ。
冒頭、演技開始前にはいつも肌襦袢の中にしまってあるファイテンのミラーボールが出ていたことにちょっと不安を覚えました。
そして、最初のジャンプ。四回転サルコウがシングルになってしまいました。
ふあああああああああああああああああ~!!!!
もうね。テレビの前で絶叫ですよ。
ショートの要素抜けは致命的です…。
その後、きちんと立て直して、他は大きなミスはなかったものの、スピンの軸を取るのにいつもより時間がかかったり、動揺しているんだろうなと思いました。
溝にはまった…と最初はアナウンスされ、その時私は「またか~」と思ったのです。
2013年や2019年の試合でも、同じように溝にはまって飛び上がれない時がありました。
ただ、2019年の試合では、自分の溝にはまったと言っていたのです。
荒川さんも「本番で自分の作った溝にはまらないように、練習の時には、あえてリンクの反対側でジャンプをする。」といったような話を本に書いていたこともあって、そういうことがあるなら、何故対策しないんだよぉぉぉぉ。と思ったのです。
ところが、試合後のインタビューを聞いてみると、他の人のトゥジャンプでできた穴にはまったと言っていました。
ミリ単位で軌道はコントロールできていて、自分が練習で飛んだ場所からずらして飛ぼうとしたらそこに穴があったと。
ただのパンクだと思って見ていたリアルタイムと
不運な穴がそこにあったと思ってみた録画とでは、演技が全く違って見えました。
ショートでのミスは命取りです。フリーを含め、上位の選手がノーミスした場合、もうこの時点で金メダルは厳しくなりました。
自力での金メダルが消えた瞬間。
それでも残りの演技、残りの音を繋いだ。自分の表現したいものを捨てなかった。
そう思って見なおすと、強靭な精神力が見えます。
一度、頭が真っ白になったのじゃないでしょうか。
そこで気持ちを繋いでくれたのは、清塚さんの音を大事にしようとした気持ちだったんじゃないかなと思います。
ロンカプは世界遺産に登録したいくらい美しいプログラムです。
世界に(できればオリンピックで)お披露目したかったに違いありません。
たった1回のノーミスしか映像が残らないなんて勿体なさ過ぎて、勿体ないお化けが出ます。
バラ1のように、何度でも見たいプログラムです。
フリー、エキシまで一気に振り返るつもりでしたが、話し出したら長いので、それはまた今度にします!